

オリオン座流星群を見ようと、毎晩スタンバっているがまだ見れない。
ペットの白鳥、エリザベスを飼っている池で最近カメを飼いはじめる。名前はスタンフォード。
道の駅湯の川で「ひかわご縁バーガー」を一週間で5個食べて、酢竿野との恋の成就にラストスパートをかけている。
奥さんと家事分担をし、火・水・木の食事当番に決まる。
一緒に宍道湖の夕日を見ようと言ったネットで知り合った男性から、「かわいい写メを送って♪」と言われ引いている。
甘手と酢竿野の仲がすでに離れられないほどの関係だと思い込んでしまった灘櫛。
絶望のふちに立ち、実際、宍道湖のふちに立っていた。
灘櫛
「もう、終わりだわ・・・」
灘櫛は泣きながらウサギのブロンズ像をなでていた。
灘櫛
「ウサちゃん、わたし、これからどうしたらいいのかなぁ?」
湖畔から2羽目の「しあわせになれるウサギ」の周囲の芝生ははげ、地盤沈下が進んでいた。
灘櫛
「ウサちゃん、ここだけ低くてかわいそうね・・・」
酢竿野
「しかし因幡さんにとってはそれは喜び以外の何物でもないがね」
灘櫛
「あ、酢竿野さん!」
酢竿野
「どうしたんだい?泣いているの?」
灘櫛
「やだっ、わたしったら。ウサちゃんが可哀想で、いつのまにか涙が・・・」
酢竿野
「地盤沈下のこと?」
灘櫛
「は?あ、まあそうですね」
酢竿野
「因幡さんの勲章だよ」
灘櫛
「あのぉ・・・因幡さんってどなたですか?」
酢竿野
「あ、ごめんごめん!ぼく、ここのウサギのこと因幡さんって呼んでるんだ。勝手に♪」
灘櫛
「もしかして、この子たちが『因幡の白兎』(注2)に関係しているってことですか?」
酢竿野
「・・・・・」
灘櫛
「・・・・・」
酢竿野
「さあね」
灘櫛
「『さあね』って、酢竿野さんって謎が多すぎます・・・」
酢竿野
「え?」
灘櫛
「いつだってはぐらかして、わたしは本当の酢竿野さんを知りたいんです!」
酢竿野
「本当のぼく?」
灘櫛
「そうです。本当の、嘘、大袈裟、まぎらわしくない、酢竿野さんです!」
酢竿野
「・・・・・」
灘櫛
「・・・・・」
酢竿野
「・・・・本当のぼくを知っても、嫌いにならない?」
灘櫛
「え?」
酢竿野
「本当のぼくを知っても嫌いにならないかって聞いてんだよっ!!」
いつになく激しい口調の酢竿野に戸惑う灘櫛。
酢竿野の言う「本当のぼく」とは一体・・・。
この真実の扉を開けてしまっても良いのか?
しかしもう後戻りはできない灘櫛と酢竿野。
その様子を山手部長が木の蔭からじっと見ていることを、ふたりは知る由もなかった。
(注1)宍道湖ウサギのブロンズ像・・・
島根県立美術館の「宍道湖ウサギ」のこと。
12羽のウサギたちのブロンズ像のうち、
岸から2羽目のウサギにご縁と幸福のご利益があると言われている。
(注2)因幡の白兎・・・
出雲神話。大国主神が兎を助けたという話。
広島県在住。
ラジオDJ&ラジオドラマ
制作出演ほか、幅広く執筆活動を行う。独特な世界観が老若男女問わずに人気。
2003年から3年間続いた「ほぼ日刊イトイ新聞」の『ほめ道を往く。』も担当。
プチフランソワーズな毎日
http://vivafran.com/